タクシードライバーの今と未来

タクシードライバーの高齢化と、人材不足がとまらない。
一言で表すと、これが今のタクシー業界の現状です。
タクシー会社によっては、ドライバー不足により、この先10年、いや5年もたずに会社がつぶれてしまう!
というような声も耳にします。
弊社は、この人材不足という面からタクシー業界をなんとかしたいという強い使命感を持ってサービスを展開しています。
そして、業界のことを知ればしるほど、その使命感は強くなる一方で、タクシー業界の大きな課題も感じるようになりました。
今日はそんなお話です。
タクシー業界の人手不足の大きな要因は、その仕事自体へのイメージの悪さがあげられ、そのイメージの悪さの多くは、歩合制という給与体系や、他職種に比べての給与額の少なさ、隔日勤務(朝8時から翌朝5時まで働く)というような特殊な勤務形態に対して言われることが多いです。
特に、歩合制と給与額については、実際転職相談の方とお話をしていても、マイナスのイメージをもたれている方が多いように思います。
話は少し変わるのですが、先日、著名人の方が、「タクシードライバーなのに、道がわからくて、カーナビを使うなんてありえない。」「初心者ならタクシー料金を割り引きにした方がいい」「タクシードライバーになるための基準を大幅に上げて、サービスクオリティをあげたほうがいい」というような話をされていました。
いわゆるタクシードライバーの質の底上げという問題です。
私の私見は置いておいて、このような意見が多くあるのもまた事実です。
なぜこんなお話をわざわざ出してきたかというと、この「タクシードライバー不足」と「タクシードライバーの質の底上げ」という2つの問題は、切っても切り離せない問題であり、これこそがタクシー業界の最大の課題だということを皆さんにお伝えしたかったからです。
タクシー会社が、なぜ歩合給を取り入れているのか?
理由はいくつかあるとは思いますが、その理由の大半はリスクヘッジによるものだと思います。
タクシー会社の営業報酬はほぼ100%タクシードライバーがお客さんに乗車してもらい、そこから得られた運賃によって成り立っているのはお分かりだと思います。そしてタクシードライバーごとの売上は一人ひとり大きくことなることが多く、1日に10万円売り上げる人もいれば、3万円の人もいます。また、10万円売り上げていた人が5万円しか売れない日だってもちろんあります。
このように売上の変動がかなり大きいため、タクシー会社としては、ドライバーが稼いだ売上の〇〇%を給与として支払うという歩合制にすることで、売上が低いのに、人件費が固定で利益を圧迫してしまうということを避けることができるのです。
ただ、タクシー会社が完全歩合制だと勘違いしている方が多いのですが、それは間違っていて、基本給プラス歩合というように計算されるのが、一般的です。ホワイトカラーの営業職のインセンティブのような考えに近いでしょう。
しかしながら、他業種から転職する人としては、一般的な給与体系ではないため、敬遠してしまう、転職にリスクや不安を感じるというのは、避けられないのでしょう。さらに勤務に夜勤があるとなると、なおさら抵抗があるのは間違いないのでしょう。
実際には、皆さんがイメージされているよりも、勤務としては働きやすく、勤務時間もきっちり決められており、働きやすいという現場の方が多いのですが、ここでの説明は長くなってしまうので、省略します。(※よければ過去記事をご参考ください。タクシーは実は隠れたいい仕事)
タクシードライバーの成り手が少ない理由はお分かりいただけたかと思いますが、これがサービスの質とどう関連していくのかが次ぎのお話です。
先ほどもお話したとおり、一人ひとりのドライバーの稼ぎがそのままタクシー会社の売上となるため、タクシー会社の売上は、タクシードライバーの数と概ね相関してしまいます。
もう少し細かくお話すると、タクシーの保有台数と、その稼働率、稼動時間当たりの売上という売上構造となっており、タクシードライバーが不足してしまうと、稼動率が下がってしまい、結果的にタクシーにドライバーが乗車せず、車を持て余してしまうような状況に陥ってしまうのです。
こうなるとタクシー会社として優先的にやるべきことは一つで、とにかくドライバーを採用しよう!!ということです。
誤解を恐れずに言うと、「年齢とか接客力やサービスの質うんぬんよりも、まずはタクシーに乗るための免許さえ持っていればいい」ということになってしまいます。
実際、タクシー会社の多くでは、タクシー業界未経験の方に対して、2種免許の取得費用を負担してでも、採用するというのが一般的になっています。さらには、就職のお祝い金や支度金を出す会社も多くあります。
この制度自体に問題があるとは決していえませんし、未経験の方からすると、タクシードライバーになるきっかけになるという意味では、良い制度とも言えます。
しかしながら、このような構造が、一部のユーザーが指摘する「タクシードライバーの質」の問題になっていることは確かなのです。
ただ、一つ言いたいのは、この問題は一概にタクシー会社が悪いというものではないということです。
タクシードライバーの質を上げるには、教育コストもたくさんかかります、優秀な人材を採用するには、報酬面でもコストがかかってしまいます。今、危機的な人手不足に陥っているタクシー会社にとって、すぐにここに投資をするというのは難しいですし、すべきではないと私も思います。
しかしながら、業界やタクシードライバーという仕事への魅力が上がらない限り、タクシードライバー不足が解消することはないでしょう。
これは当たり前のことですが、タクシードライバーの仕事の魅力をどのように伝えていくのか、他業種の人や、これから働きだす学生がタクシードライバーをやりたい!とどうすれば思ってくれるのか、そのためにどのような変化をしなくてはいけないのか。それは考えなければいけない時期に来ていると感じます。
今回伝えたかったことがもう一つあります。
利用者側としても、タクシー業界についてより詳しくなることで、もう少し理解を深められないのか?ということです。
前述の著名人は初心者のタクシー料金を割り引いた方がいい。タクシードライバーはプロなんだからカーナビを使うなとおっしゃっていました。
たしかにそれは理想なのかもしれないですし、目指すべきところはそこなのでしょう。
しかしながら、今タクシー業界はそれを優先してやるべき状況ではありません。各社企業努力をしながら、変化をしている最中なのです。
ある会社は、歩合という賃金体系にメスを入れようとしていますし、またある会社は新卒採用を積極的に行っています。付加価値をつけたハイエンド向けサービスを提供したり、最近ではスマホ配車などのITなどの技術も積極的に取り入れていっているのです。
そのような変化の過渡期にあることを理解し、タクシー業界が良くなろうとしていることを分かっていれば、
自分がタクシーに乗るときに、たとえ新人ドライバーさんであっても、目くじらを立てるのではなく、
「頑張ってくださいね!」といってチップを少しお渡しするぐらいの余裕があってもいいのではないかなと個人的には思います。
余談ですが、先日ちょうど新人のタクシードライバーさんに当たって乗車する機会がありました。
ドライバーさんは
「まだ道が分からないことも多いし、不慣れなことや不安なことも多い。だからお客様に迷惑をかけてしまうことがあるのが、とても心苦しいけれど、プロとして、努力して早く一人前のドライバーになりたい。でもこの仕事は大好きだから、みんなにやって欲しいし、ドライバーのイメージが向上するようにやれることからやっていきたい!」
とおっしゃっていました。
特別な例ではないと思います。
タクシードライバーさんはみんな新人の頃は不安なのです、ましてや未経験からの転職ですし、40代、50代での転職をされる方も多いです。
しかし、決してプロ意識が低いわけではなく、むしろ高い方が多い印象があります。意識が高いからこそ、満足できるサービス提供ができていないことに心苦しさを感じているのでしょう。
タクシードライバーになった方々には全く罪はありません。むしろ人手不足の業界で、分からないことも多いこと業界に勇気を持って飛び込んできてくれる方たちには、私はむしろ敬意さえ感じます。
このような方たちに対して、「プロだから」という一言で、文句を言ったり、批判をすることは私はナンセンスだと思います。
その人たちだって、新人の時代はあったと思いますから。
弊社としてはこれからも、タクシー業界のイメージ向上と人材不足解決をミッションとして、さらによりよいサービスを展開していきたいと思います。
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